【レポート①】1日目~オープンアトリエ「春の目ざめ -影あそびパフォーマンスワークショップ」

3月30日、31日に奈良県で開催された「オープンアトリエ 春の目ざめ―影あそびパフォーマンスワークショップ」。1日目のワークショップの様子について、プロジェクトスタッフの野田広葉さんにレポートを作成いただきました!初対面のなか、少し緊張も残るままスタートしたこの日ですが、段々と気持ちもほぐれ、みんなで創作に向かっていく様子を丁寧な写真とテキストで振り返っています。ぜひお読みください。

===

1日目:2024年3月30日(土) 14:00〜18:30

障害のあるなしに関わらず、誰もが気軽に参加できるアートワークショップやアートスペース「オープンアトリエ」。
今回は「春の目ざめ」をテーマに、春に向かってうごめく様々な生き物や気配、エネルギーを“影”を使って表現する影あそびパフォーマンスワークショップを行いました。

1日目はテーマにぴったりの、身体もむずむずと動き出すような暖かな日。
アートセンターHANAのスタッフで俳優の佐藤さん、障害とアートの相談室スタッフで音楽家の大井さんがファシリテーターとなり、参加者のみなさんと「春の目ざめ」を表現していきました。

<アイスブレイク>
今日の内容を簡単に説明した後、好きな食べ物と今日呼んでもらいたい名前を発表する形で自己紹介をしてもらいました。

まだ緊張感もあったので、アイスブレイクをしていきました。
頭を使う動きをファシリテーター対個人でした後で、隣の人や周りの人と関わるようなことをしていきます。動いていく中で少しずつ参加者全員が繋がったりし、笑いも起きていました。

最後はゆっくりと部屋を歩き回ってもらいます。ここからはインドネシアの民族楽器、ガムランの音がみなさんの動きに寄り添います。
ファシリテーターが言う天候や景色の中を歩いていきます。雨の中、雪の中、風の中、ぬかるみの中、星空の下…夜の場面は部屋も暗くし、灯りを置きます。
会場にあらかじめスクリーンとして設置された白い布や、壁や天井にみなさんの影が映っていき、少しずつ影へも意識を向けていきました。
日常の何気なく過ごす中では意識しない身体の動きや表現に意識を向けていくような時間でもありました。

<影と親しむ>
少しずつ緊張もほぐれてきたところで、影で遊ぶ時間へ。
部屋を暗くして、影についての紹介をしていきました。光源との距離で影が大きくなったり小さくなったりすること、光源が二つになると影も二つになること。
その他、用意した材料の面白い影の紹介。
紹介の後は、参加者のみなさんにも気になった素材を手にしていろんな影を試してもらいました。

水の入ったペットボトルを床に置いて光源を動かすことで形を変える光と影。
うさぎになりたい!と、うさぎの耳を作って自分に貼ったり。影は自分に貼り付けたものをすっかり馴染ませてくれます。
木の枝に花を咲かせたい!と、卵パックを切ったものにカラーセロファンを入れて木の枝につけたり。光を当ててみると、卵パックの凹凸とクシャリとしたカラーセロファンが影になると良い質感になり、黒い枝に色とりどりの花を咲かせます。

何種類かのザルはそれぞれ異なる表情を見せてくれました。桜の花のような模様になったものも。

大きめの瓶に光源を出し入れするときれいな光が生まれて、「何かで使いたいな」とお気に入りのものも見つかっていきます。

イメージする見え方にするための光の当て方を探ったり、他の人の影と組み合わせたりしていきました。組み合わせていくことでまた異なる面白い影ができて、パフォーマンスに使えたらいいな、というものもそれぞれ出てきたようでした。

普段身近にあるものが、光を当てて影にすると思いがけない姿を見せてくれるのを、じっくりと楽しみ、影と親しむ時間。
皆さんが生み出す影や光の中にいると、どこか懐かしいような気持ちにもなりました。

<音と親しむ>
今回は2チームでお話をつくり、片方のチームが演じている時にもう片方のチームがそのお話に合わせて楽器を演奏します。
ファシリテーターからインドネシアの民族楽器、ガムランについての説明と注意点・楽器の演奏の仕方を説明し、参加者の皆さんにも楽器に触れてもらいました。
最初は恐る恐るという感じで楽器に触れていた皆さんも、音を鳴らしている内に自然と笑顔が浮かんでいました。
楽器に慣れてきたら、自分の気に入った楽器を選んで、まずはファシリテーターの指揮に合わせて、次は前に立った人の動きに合わせて自分が選んだ楽器を奏でます。
ガムラン特有の音階と音の響き、参加者の皆さんの良い感性で素敵な演奏が生まれていました。

<お話を考える>
改めて今回のお話のテーマをお話。春になって何かがうごめき出す。春になるその前の風景も大切にしてほしい、ということなどをファシリテーターからお話して、2チームに分かれて話し合いをしました。チーム名は「うさぎチーム」と「ぶどうチーム」になりました。
それぞれ、“春の目ざめ”のイメージを膨らませて、表現したいことを言葉にしていきました。
冬・春といえば?ということから、自分がお話の中に入れたいものをスタッフが間に入りつつ、聞き出していきました。

おおよその流れができたら、さっそくものづくりへ。手を動かすことで広がるイメージもあったようです。
頭に思い描くものを、目の前にある素材を使って影で表現するのは、つくったそのものを見せるのとはまた異なる難しさと面白さがあります。ものをつくっては影を出してみて、試行錯誤を繰り返していきました。

最後に出来上がったところまでのお話と影絵を発表しました。
影という思い通りにならないようで、思いがけない形をもたらしてくれる大らかな素材としての姿と、音楽の空間や雰囲気をつくる力を感じた1日でした。
異なる雰囲気を持った二つのお話が緩やかにつながり、心踊る賑やかな春に向かうお話になりそうな予感を持って1日目は終了しました。

(写真、文/野田広葉)

loading...