【レポート】「バック・トゥ・バック・シアター」鑑賞ツアー

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭(以下、KEX)は2010年にはじまった国際舞台芸術祭です。国内外の先鋭的なアーティストを迎え、演劇やダンス、音楽、美術などのジャンルを越境した舞台作品を約1か月にわたって紹介しています。
今回、KEXよりたんぽぽの家・障害とアートの相談室に、障害のある人との鑑賞プログラムを企画してほしいとお声かけをいただき、鑑賞ツアーを実施しました。

障害のある人が舞台を鑑賞するには、劇場までの交通機関や客席の制約、慣れない環境でのストレス、字幕や手話などの情報保障の必要性などさまざまな課題があります。
一方で近年は文化施設でも障害の有無にかかわらず楽しめるように配慮する「アクセシビリティ」を高める重要性が認識されはじめています。
今回の鑑賞ツアーはこうしたアクセシビリティについて具体的な検証や改善につなげるためにも実施されました。

募集案内はこちら https://artsoudan.tanpoponoye.org/news/5503


鑑賞したのはオーストラリアの劇団「バック・トゥ・バック・シアター」。知的障害やニューロダイバーシティ(神経多様性)を自認するパフォーマーを中心として、30年以上世界中で公演活動をしてきた劇団の新作『いくつもの悪いこと』です。

参加したのは障害のある人7人とご家族や支援者など同伴者5人。障害といってもさまざまで、知的に障害がある人、脳梗塞による言語機能障害と肢体障害、文字を読むことに困難があるなどをお持ちの人たちが参加しました。舞台の鑑賞経験は少ない人がほとんどでしたが、なかにはダンスで舞台に立つ経験をもつ人や、舞台美術の制作に興味があり岩手県からやってきた人もいたりと多彩な参加者が集まりました。

会場のロームシアター京都に集まると、まずはKEX共同アーティスティック・ディレクターである塚原悠也さんが芸術祭やバック・トゥ・バック・シアターについて紹介。塚原さんが演劇の内容を楽しむことのほかに、照明や美術などを楽しむことや、もし英語の字幕についていけなくなってもそのあとの流れのなかで理解できることもあることなどを話してもらったことで、参加者も舞台にはいろいろな楽しみ方があることを理解できたように思います。

そのあと、舞台の裏口、袖を通って、公演直前の舞台上にあがり、美術や舞台などを案内をしてもらいました。通常の観劇では上演前に舞台のようすを見ることはできませんが、強い刺激や予想外のことが起こることが苦手な人が心の準備ができるよう、あらかじめ見えるものや物語の流れの一部を知っておくことで、不安を少なくして公演を楽しむことができます。ホールの舞台にはセットが組まれており、一つずつ間近でみたり、なかには直接触れさせてもらいました。さらに劇団スタッフとの交流ができ、参加者の期待は大きく高まりました。

本番はそれぞれが見やすい席から鑑賞。上演後のポスト・パフォーマンス・トークを聴いたあと、さらにこのツアー参加者のために出演者、演出家との交流の時間が設けられました。やや緊張した空気で交流がはじまりましたが、舞台美術はいつ誰が思いついたのかといったクリエイションについての細かい部分に興味を示したり、役者の芝居に対する考え方や趣味などのプライベートな側面を聞いていくなかで、徐々に言葉の壁を超えて打ち解けていき、鑑賞ツアーは終了しました。
今回、貴重な機会をいただきました。今後もより舞台を楽しむことができる機会を考えていきたいと思います。


【参加者の感想】

・貴重なセットを見ることができたり、お話もしてくれて、見る前からワクワクして楽しめました。見るポイントのような点も鑑賞する前にお聞きできたことも、このような作品には、助けになってよいと思いました。
・外国の演劇を初めて鑑賞しました。良かったです。
・音声ガイドが必要だと思った。
・ゆっくり字幕を表示してほしいです!!
・交流会では自分と趣味が違うかもしれないと遠慮をして(電車や照明器具など)自分の好きな話題をしてみたかったけどどうやって話をしていいのかわからなかったんだそうです。
・字幕がだれが話しているかわからなかった。
・(事前解説について)お話が抽象的で一文が長く感じられて、障害のある人にとって届いていたのか心配になった。
・こういう活動、取り組みがたくさん広まるといいなと思います。


KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2025 連携プログラム
「バック・トゥ・バック・シアター」鑑賞ツアー

日時:2025年10月5日(日)14:00〜18:00
会場:ロームシアター京都 サウスホール(京都市左京区)
参加:12名(障害のある人7名、家族・支援者5名)
主催:一般財団法人たんぽぽの家 障害とアートの相談室
協力:きょうと障害者文化芸術推進機構
連携:KYOTO EXPERIMENT
*厚生労働省「令和7年度 障害者芸術文化活動普及支援事業」

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