たんぽぽの家・障害とアートの相談室では、2013年より障害のある人やケアの現場、福祉をとりまくコミュニティがより豊かになることをめざし、表現の発信や学び合いの場づくりなどに取り組んできた。2022年度から、ESD研究(持続可能な開発のための教育)に取り組む柴川弘子さんを協働のリサーチャーに迎え、一歩踏み込んでテーマを深めていく「障害とアートの研究会」を実施。1年目より継続して、「重度の障害のある人とアート」をテーマとして、重度の障害のある人にとって、また高齢化により障害の重度化が進む障害のある人やその周辺でケアにかかわる人たちにとって表現活動、アート活動はどのような意味をもっているのかを考えてきた。
2年目となる2023年度は、研究会に参加する人たちが研究会での出会いを通してそれぞれの実践を深めていくこと、実践をかたちにして伝えていくことをめざし、その成果としてZINE(非営利で発行する自主的な出版物)の発行に取り組んだ。「自分のなかでもう一歩進めた取り組みに触れたい」「自分の言葉で書いたり、書く手前で考察したりする時間や機会がほしい」「ライティングを学びたい」などといった動機をもつ、福祉の現場で表現活動を支援する人や大学で芸術を学ぶ人などが研究会メンバーとして集まった。オンラインで実施してきた、全4回の研究会を振り返ってみたい。
前半をゲストによる話題提供、後半を参加メンバーによる自己紹介と交流の時間の二部制とした。話題提供は福岡の工房まるではたらく池永健介さん。まるで活動する大峯直幸さんも一緒に参加した。まるで活動する人のなかには、身体に重度の障害のある人も多く、スタッフは障害のある人の心身の変化を感じ、状況に応じたケアのありかた、その人らしく生きることを一緒に考えることを模索している。身体に障害のある大峯さんは、障害が重度になっていくなかで自身の描きたいもの、つくりたいものを変化させながら創作活動に取り組んできた。そのとき、周囲はどのようにかかわり、どのような環境をつくったのか。またどのような心持ちで大峯さんの創作活動にかかわってきたのかをきく時間となった。「遊び、実験、ヒマつぶし いずれでもかまわない」とスライドにあるように、池永さんの発表からは、身体が変化しながらも創作活動を続ける大峯さんの生き方を尊重する池永さんやスタッフの姿勢が感じられ、参加メンバーは共感しながら発表をきいた。
後半は参加したメンバーが自己紹介をし、それぞれの活動や参加動機について共有、池永さんの発表についての意見交換を行う時間となった。
2回目は参加メンバーの堀健一さんと平春ななさんから活動の発表をしてもらい、オンライン上のホワイトボードのようなツール「miro(ミロ)」を使い、それぞれの考えを可視化し、話し合いを進めていった。柴川さんからのアドバイスで、次の4つの視点を持って発表をききながら、それぞれがmiroに書き留めた。
〈4つの視点〉
・LIKED 良いと思った点
・LEARNED 新たに知った・学んだ点
・QUESTION 気になった・もう少し聞いてみたい点
・SUGGESTION/COMMENTS 提案・コメント
堀さんからは紙ロボットをつくる、自閉症をもつムラタくんとの出会いから、彼のつくるものを広めていきたいという発表があった。平春さんからは映画『地球交響曲』のすばらしさを通して、障害のある人と健常者への相互理解を深めていきたいという発表があった。
(堀建一さんによる話題提供の際のmiro)