2月28日、かしはら万葉ホールにて開催しました。
2回目の今回は、Gallery OUT of PLACE代表の野村ヨシノリさんより現代美術を日頃取り扱う視点からのお話をしていただきました。
日本の現代美術の作家として草間彌生さんを取り上げ、統合失調症でありながら、アールブリュットではなく現代美術作家として広く知られている事を取り上げられ障がいがある人の作品制作の活動は必ずしもアールブリュットのジャンルに分けられるのではないというお話をされました。
そこから、そもそもアートとは何か、現代美術とは何かというお話となり、表現や創造されたものの発信方法によって定義が変化するといった美術事情もお話いただきました。
作品を商品として取り扱う場合の作家とギャラリーと企業、コレクター、美術館などのそれぞれの関係性、そして作品が作者から離れた後に発生するセカンダリーマーケットの存在、アートから資産価値を見出し株のように扱われ投資の対象となる場合もあるアートフェアーなどの世界のマーケット事情と日本の現状について。
商品としてではなく、作品の存在意義、表明を発信する場についての紹介では、ギャラリーや奈良でおこなわれているアートプロジェクトから世界中で存在する芸術祭について、実際に野村さんが行かれた場所の作品風景の写真を見ながらお話いただき、幅広い表現を紹介していただきました。
私たちは表現の何に魅力を感じ、何にお金を払うのか。
それを生み出す土壌は何か、著作権は何を守るのか。
限られた時間の中で野村さんは紙面を用意してはっきりとした考えを示して下さりました。
著作権こそが作品の資産価値と作家の名誉を支えています。著作権をもっと身近に感じたいという方は、是非展覧会をみにいき、身近な表現やアートをもっと鑑賞し購入してみて下さい。
日本人は、アートをお金にする事を綺麗なものとして捉えられず、精神を汚しているかのように感じる所があるため、作品を買う文化がなかなか根付かずにいるが、
アートをお金にすることは作家の材料費、生活費になり、結果として作家を守る事になるとのお話をいただきました。
後半は弁護士の田中さんより野村さんの講義をふまえて、感想を含めたお話をしていただきました。
野村さんのセカンダリーマーケットの話を受けて、一度作者から離れた作品は所有者が所有権を保持するため、作者の許可なく販売価格を変更することができるが作品を複製して販売することは著作権を侵害するとの話や、作品の販売について著作権法に違反する事があったとしても、ギャラリーと作家との間で話し合いによる同意があれば実行できることなど前回から発展したより専門的な話を伺うことができました。
現代美術とアールブリュッドの分類については、人の心を動かす力がどのように発信されるかの違いであり、作品そのものから動かされる感情と、作者のバッググラウンドも含めて心を動かされるモノとでの優劣はないとの強いコメントをいただきました。
そして野村さんより知名度が上がれば作品の価格も上がるとのお話を踏まえ、障がいのある人の作者の周囲の方は作品を発表していくことで作者の生活を守ることとなり、これからは障がい者アートがつくりだす社会の広がりを発信していくことが大切との言葉をいただきました。
今回も沢山の質問があり、野村さん、田中さんのお話を聞くことができ参加者の皆さんの認識が深まってきていることを感じました。
(レポート:「障害のある人のアートと著作権に関するセミナー」スタッフ田中清佳)