《文化的土壌の形成に向けて》
各地で開催されるようになった芸術祭やアートプロジェクト、また美術館で行われる教育プログラムやアウトリーチ事業が、特定のアートファンだけではない人々へもアプローチし、社会との新たな回路を生み出しつつあります。プログラム/プロジェクトに参加する人が得た何かしらの発見や経験が蓄積し、フィードバックされ、それぞれの気づきや変化が周りへと連鎖、地域における文化的土壌の形成へとつながっていくことが期待されています。一方、実践の積み重ねが必要不可欠であるにもかかわらず、継続していくことの難しさを抱えている現場も少なくないはずです。
2003年よりアーティストと共に創造の現場を日常の中につくってきたブレーカープロジェクトでは、予期せぬ出会いを誘発したり、私たち一人ひとりに潜在する創造性やまちの資源、課題を掘り起こしたり、福祉や教育、まちづくりなど他領域とのネットワークを形成してきましたが、「アートだからこそできること」を原点に戻って考えてみる必要性も感じています。
現在ではあたりまえのように実施されるワークショップやアートプロジェクトですが、今回のトークでは、そういった取り組みの先駆けとなった水戸芸術館や金沢21世紀美術館に立ち上げから関わり、アートを介して多くの人々が関わる仕掛け/しくみづくりに取り組んできた黒澤伸氏をゲストにお迎えし、実験的/創造的な学びの機会をいかに生み出していったのか、そのルーツにも触れながら現在に至る変遷を紐解いていきます。後半は、美術館やアートプロジェクトという枠組みに囚われず、時間をかけて耕されていく文化的土壌に必要なことは何か、広い意味でのラーニングや連携のあり方について考えます。
▼日時:2023年3月18日(土) 14:00〜16:30頃(開場 13:30)
▼会場:大阪中之島美術館 1F ワークショップルーム
大阪市北区中之島4-3-1
▼参加費:500円
◎ゲスト/ 黒沢伸 [(公財)金沢芸術創造財団 芸術・交流アドバイザー/アーツカウンシル金沢統括ディレクター/金沢市民芸術村総合ディレクター]
◎進行/ 雨森 信[Breaker Project ディレクター]
◎プログラム
1部:「アートの根拠を巡って」黒澤 伸
2部:ディスカッション「アートが生み出されるまち!?」
◎申込方法
こちらより必要事項を入力、メッセージ欄に「アートを・育む・まち」参加希望・参加人数を明記の上、お申し込みください。
※メールで申し込みいただいてから5日以内に返信がない場合は恐れ入りますが、迷惑メールを確認いただくか、再度メールかお電話にてお問い合わせください。
◎ゲストプロフィール
黒澤 伸 /(公財)金沢芸術創造財団 芸術・交流アドバイザー/アーツカウンシル金沢統括ディレクター/金沢市民芸術村総合ディレクター
1959年東京生まれ。89年「水戸芸術館現代美術センター(茨城県水戸市)」の立ち上げに参画。学芸員として美術館の新しい在り方を提示し、日本の現代美術界に新風を吹き込む。97年同美術センターを退館。東京に戻り約1年間フリーランスのキュレーターとして展覧会の企画を手がけた後、99年、「金沢21世紀美術館(石川県金沢市)」に学芸員として就任。約5年間の準備期間中に建物の設計から関わり、その一部として設置されるコミッションワークの導入などを担当するほか、エデュケーターとして様々なプロジェクト/プログラムに取り組む。20年に同館副館長を退任後、現職。
◎お問合せ
ブレーカープロジェクト事務局
tel:070-5046-8667
Email:info@breakerproject.net
▼主催:ブレーカープロジェクト実行委員会(大阪市、NPO法人記録と表現とメディアのための組織、一般社団法人brk collective)
前川は2021年7月より、美術家と科学者の交流の機会を作る企画「ファンダメンタルズ プログラム」で出会った数学者の中島啓氏とペアを組み、継続的に交流を続けています。その交流の一環として、2年目となる2022年10月、中島氏の所属するカブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)にて10日間の滞在制作を行いました。本展では、その滞在制作の報告を展覧会と対談にて行います。
今回、大阪大学人文学研究科美学研究室、kumagusuku SASの協力を得て、大阪(展覧会・公開ミーティング)と京都(対談)の関西2都市での開催となります。
◇展覧会
2022年10月に行ったKavli IPMUでの滞在制作の報告展。滞在中に行った展示、そこを起点に始めている制作、交流に関する動画の限定公開、関連資料などの展示を行います。
▼日時:2023年3月28日(火)〜3月31日(金) 11:00~18:00 (※最終日17:00まで)
▼会場:大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構サイエンス・コモンズ サイエンス・スタジオB
(〒560-0043 大阪府豊中市待兼山町1)
◇プレイベント「対談:数学者と美術作家の交流の試み」
展覧会のプレイベントとして、今回の滞在制作のきっかけとなった科学者と美術家の交流の機会を作る「ファンダメンタルズ プログラム」とそこでの交流について、2021年7月より前川と交流する数学者の中島啓さんと、プログラムの運営を担う坪井あやさんと、京都市内にあるスペースkumagusuku SASにて、ざっくばらんにお話しします。
現在も進行中の美術家と数学者の交流の一環としての大阪での報告展と公開ミーティング、また、それに先立つ京都での対談に、是非お越しください。
▼日時:2023年2月25日(土)15:00〜16:30
▼会場:kumagusuku SAS(〒602-8126 京都市上京区中書町685-2)
▼入場料:無料 ※予約不要・先着順
▼登壇者:前川紘士(美術作家)/中島啓(数学者・Kavli IPMU教授)、坪井あや(ファンダメンタルズ プログラム運営・Kavli IPMU広報)
◇会期中イベント「公開ミーティング」
▼日時:2023年3月30日(木) 15:00〜16:30
▼会場:大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構 サイエンス・コモンズ サイエンス・スタジオB
▼ゲスト:中島啓(数学者/Kavli IPMU教授)
展覧会会場にて、中島さんとのミーティングを公開で行います。
◎プロフィール
前川紘士(まえかわ こうじ)
美術作家。1980年生まれ。2007年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。様々な対象や機会の中でその都度の関心を確かめながら諸活動を継続し、近年は触る作品を一つの軸として制作活動を行う。主な活動に、「ユニバーサル・ミュージアム:さわる!“触”の大博覧会」国立民族学博物館、大阪(2021)、「コミュニケーションの部屋」和歌山県立近代美術館、和歌山(2021)、「釜ヶ崎の表現と世間をめぐる研究会」釜ヶ崎芸術大学、大阪(2019-)など。
中島啓(なかじま ひらく)
数学者。1962年生まれ。Kavli IPMU※教授。幾何学と表現論の双方に関わる空間である「箙(えびら)多様体」の導入や、物理学に起源を持つ「ゲージ理論のクーロン枝」の概念を数学的に取り扱う研究がある。
※カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU):正式名称「東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)」。数学者、物理学者、天文学者が集まり、宇宙の根源的な謎の解明に挑む研究機関。2007年発足。
坪井あや(つぼい あや)
ファンダメンタルズ プログラム運営/ Kavli IPMU広報。科学者と美術家の交流の仕組みづくりを行う企画「ファンダメンタルズ プログラム」の運営を2020年より行う。当企画では各ペアに運営側の担当が付き、前川×中島ペアの担当でもある。「ファンダメンタルズ プログラム」は2021年度、2022年度開催され、国内の科学・技術の研究機関や大学などの広報担当者が集まるインデペンデントな互助組織である「科学技術広報研究会(JACST)」の「隣接領域と連携した広報業務部会」が運営の中心を担う。
※関連イベントに関する詳細・最新情報はkumagusuku SASのウェブサイトにてお伝えします。https://kumagusuku.info/sas